クラピカは中国の死神!?

1. 前言
ヨクシン編を愛する皆さんはきっと、ヒソカの予言詩にあるクラピカの暗喩を覚えている。
赤目の客があなたの店を訪れる
半身は天使で半身は死神出典:富樫義博『HUNTER×HUNTER』No.12, 第105話, 26頁
天使の対比もある。そのため、日本人ならおそらく鎌を振り回す西洋の死神をイメージするだろう。
私も最初そう思っていたが、クラピカと師匠の会話をよく吟味するうちに、そうではないと考えるに至った。
2. 冥府と鎖の関係
実は「死神」と関連する発言をクラピカは自らしたことがある。
師匠のイズナビからなぜ具現化の対象に鎖を選んだかを聞かれたとき、クラピカはそう答えた。
冥府に繋いでおかねばならないような連中が
この世で野放しになっているからだろう出典: 富樫義博『HUNTER×HUNTER』No.9, 第83話, 182頁
野放しになっている悪党を自分の手で捕まえて冥府に連れていくのは、まさに死神の所業だ。
冨樫先生はきっとここを描いたとき、すでに「死神」という象徴をクラピカに付けるつもりだっただろう。
12巻の予言詩に出現した「死神」のワードは、この時の伏線を見事に回収した。
しかし、少し違和感があるよね。
魂を獲るための武器としてクラピカが選んだのは鎌ではなく、「鎖」なのだ。
「冥府」と「鎖」、つまり「死神」と「鎖」の相関性は、日本人にとって自然ではないかもしれないが、私のような中華文化圏出身の人なら容易に連想できる。
中国民間信仰では、死神の役目は「無常」(もしくは黒白無常や勾魂使者という)という冥府の役人によって果たされている。「無常」が魂を獲る武器は、まさに鎖である。
西洋の死神であるグリム・リーバーは、「その時」が来た人間ならば善悪を問わず鎌を振り下ろす冷徹な存在だ。
一方、中国の死神「無常」はグリム・リーバーと違い、鎖を用いて強制連行させる対象は主に悪逆非道の魂である。つまり、冥府の役人として、善悪を裁く役目も担っていると言える。中国では「無常」にまつわる勧善懲悪の民話はたくさんある。
野放している悪党を裁くというニュアンスで発言したクラピカには、グリム・リーバーより無常のほうがよっぽとイメージに合う。
ちなみに、「無常」は白と黒の2人のペアで、どちらも恐ろしい形相で描かれる。そのため、今回は画像の掲載を控えた。怖がらない人は検索してみてくださいね。
3. 最後
冨樫先生はきっと無常の話を知りながら、クラピカのこの設定をしたよね。
各文明の要素を積極的にハンターハンターに取り入れているから、そもそもクラピカのキャラデザインに中国の要素を混ぜたかもしれない。
考えれば考えるほど怪しいところがたくさんあるよね。
例えば、クラピカの初期武器は李小龍が代名詞となった双節棍(ヌンチャク)の構造と非常に似ている。

画像提供: Google Gemini 2.5 Flash 生成。生成日:2025/10/13。

双節棍の典型的な攻撃技と全く一緒じゃないか。
出典: 富樫義博『HUNTER×HUNTER』No.9, 第4話, 95頁
また、ゾルディック編で着ていたクルタ族の意匠と明らかに異なるあの赤い服は、一見するとあの有名ならんまの服(中国伝統服の唐装)に酷似している。

画像提供: Google Gemini 2.5 Flash 生成。生成日:2025/10/13。

出典:富樫義博『HUNTER×HUNTER』No.5, 第41話, 118頁
まあ...らんまと同じような服を着せるのは、中国要素の取り入れよりも「男性か女性か分からないキャラ」を暗示する遊びのほうが、しっくり来るんだけど笑。

